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【LIFE STYLE】パリ近郊 花とともに暮らす

Update : 2020.12.27
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雨音で目が覚めた。

 

時計を見ると短い針が7の字のあたりを指しているのがぼんやり見えた。辺りはまだ暗い。
昨日の、あの青い空とクジラ雲の気持ちのいい一日は束の間、今日はしとしと雨のようだ。

A

今年もそろそろ数日を残すだけになったが、冬至を超え太陽が姿を見せてくれる時間がこれから微妙に少しずつ増えていく。
本格的な寒さはこれからだというのに春に向けて折り返し地点を、くるり、と回ったような気がして妙に嬉しい。

雨間をぬっていつものように散歩に出ようとすると珍しく犬が動かない。いつまた降り出すかわからないよ 、と言わんばかりにじっとこちらを見ていたが、耳を少し動かしやっと腰を上げた。

 

農園の庭にあるユ-カリの大木のあたりを通りかかる。

余りにも背が高すぎて最初はこの木がここにあることも知らずにいたのだが、ある日、強風が吹き、太い枝が折れ、地面になぎ倒されているのを発見しその存在に気が付いた、という劇的な出会いをした。

B

ユ-カリの下に立ち、空を見上げた。茶色い樹皮がぼろぼろと剝け白い木肌が見えている。

こんなに大きくなった今でもこの木は成長し続け、古い樹皮が引き裂かれ、新しい木肌を現わしている。つるつるとしたその白い木肌を見ながら、もう少しで巡りくる年のことを考えた。

C

池の近くで宿り木が目に入った。一年中、丸いものがいくつも木の枝にぶら下がっていて、いつ見ても奇妙な風景だ。フランスでは大晦日に、この宿り木の下でハグやキスをすると幸運に恵まれるという言い伝えがある。この時期、葉が落ちて寒々しい木々に宿るみずみずしい緑色のこの植物を見ると確かに新しい年に向けていいことが起こりそうな気もする。

D

去年の今頃は何をしていただろう。にぎやかな街の音を遠くの方で聞き、時には友人たちとテーブルを囲み、時には一人で終わっていく年とこれから始まる年のことを考えていたような気がする。ゼロに立つ時間。そして何もなかったように庭の植物たちはそこにいて、静かに芽吹きの季節を待っている。

 

E

雲の流れが速い。

その中から太陽が見えた。少し早めにいいことがやってくる予感がする。

 

明日は晴れかもしれない。

 

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【PROFILE】
西田啓子:ファーマーズフローリストInstagram@keikonishidafleuriste
フランス・パリ近郊花農園シェライユ在住。パリの花のアトリエに勤務後、自然を身近に感じる生活を求め移住。以来、ロ-カルの季節に咲く花を使いウエデイングの装飾や、農園内で花を切る事から始める花のレッスンを開催。花・自然・人との出会いを大切にする。
https://keikonishida-fleuriste.jimdo.com/

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