モキチのブログ 「ひと皿」の向こう側

PROFILE

「モキチ」ことライター齊藤素子。銀座・泰明小学校卒業。OLやギャラリー勤務を経て、
1995年『VERY』創刊時にライター稼業を始める。食や旅のページを中心に雑誌やWEBで活躍中。
その一方で、世界初の腰痛専門WEBマガジン『腰痛ラボ』では編集長を務める。

【RESTAURANT】ひと皿の向こう側/HOPPERS(ホッパーズ) 後篇

Update : 2022.05.15
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スリランカの伝統的な味、料理法を継承しながら

新しいスリランカ料理のスタイルを発信する店

東京証券取引所を有し、日本最古の銀行が誕生するなど、金融の街として発展してきた日本橋兜町エリア。現在、再活性化プロジェクトが進行中の日本橋兜町にオープンした、モダンスリランカ料理の店「HOPPERS」。スパイス料理の魅力を新しいスタイルで発信し続けてきた押上の人気店「スパイスカフェ」の姉妹店です。シンプル&ミニマルで洗練された店内に、少し意外な印象を受けるかもしれません。

店のデザインコンセプトは、スリランカの海沿いのリゾート地にある小さくて、小洒落たレストラン。

「スリランカ料理の店というと、インドのカオス的な空間を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、スリランカは余計なものを削ぎ落とした、シンプルでミニマルなデザインや建築が多い。だからこの店はとてもスリランカらしい空間とも言えます」(オーナーシェフ・伊藤一城さん)

使われている色も黒、茶、コンクリートの3色のみで、そこに料理やスタッフが色を添えるイメージだそうです。

こちらが前編で紹介した「ライス&カレー」(¥1,650

「ライス&カレー」とは、スリランカの定食のことで、インドならターリー、南インドではミールス、ネパールならダルバード。「HOPPERS」でのコンセプトは“ハレの日に食べるライス&カレー”ということで、惣菜が多めに盛り付けられています。盛り付けが美しく、食欲をそそられます。

ライスを囲むように並ぶ惣菜とライス、別の器に盛り付けられたカレーを少しずつ混ぜながら食します。惣菜を簡単にご説明しましょう。

イワシの尻尾のあたりにある惣菜から時計回りに。

【パリップ】スリランカの家庭での代表的な惣菜、レンズ豆のカレー。「日本の味噌汁のように地域や家庭によって味付けが異なりますが、モルディブフィッシュ(日本の鰹節のような食材)を使うのが一般的です。すごく出汁感を感じます」(伊藤さん)

【バナナの蕾のココナッツカレー】バナナの蕾をザクザクと切ってココナッツで煮たカレー。スリランカでは庭にバナナが植えられている家も多く、その蕾を摘んで使うポピュラーなカレー。

【ビーツのココナッツカレー】

【ナスモージュ】素揚げしたナスとタマネギに蜂蜜やビネガー等を加えて甘辛くしたもの。佃煮のような味わい。

【ケールのサンボル】サンボル=ココナッツで和えたもの。

【大根のココナッツカレー】

【ポル サンボル】ポル=ココナッツ

【パパダン】豆の粉を薄くのばして揚げたもの。お皿の上で割ってライスやカレーと一緒に食べるとクリスピーな食感がプラスされます。

【イワシ】スリランカでは塩漬けにしたイワシを揚げるのが一般的ですが「美味しい丸干しが手に入るので、プレートごとに焼きたてをお出ししています」(伊藤さん)

この焼きたてのイワシ、とっても美味しいです。

カレーは3種類の中から選ぶことができます。撮影したカレーは【ポークカレー】で、シナモン、クローブ、カルダモン、レモングラスなどが使われています。

ディナータイムは、モダンスリランカ料理がコースで供されます。

こちらは魚介の皿「タコのゴラカ煮込み」。

ゴラカの実を乾燥させて燻製にしたスパイスで、魚のカレーに酸味をプラスするために使われることが多いとか。香味野菜と共にじっくりと煮込んだ柔らかなタコに、ゴラカを使ったソースをたっぷりとまとわせます。セロリアック(根セロリ)のピューレを添えて。

こちらは肉の皿「ラムのパイ包み」。

ラムはラムラックの最も柔らかな部分を使用。ラムをマッシュルームや乾燥させたトマトと一緒にパイで包み、オーブンで焼き上げます。パイ包みの効果でラムはしっとりと焼きあがり、カットしてみるとこの美しさ!

たっぷりのカレーリーフ、白ワイン、生クリームなどを使ったソースにグリーンチリの鋭利な辛さをプラス。旨味の強い、まろやかなラム肉とは抜群の相性。

ワインは、スパイス料理と相性のいいナチュールワインを提供。

右・「インディシオ ガルガンタ フンダ 2018」(ポルトガル・ドウロ地域)

20種類以上のフィールドブレンド(同じ畑で育った多品種のブドウを混ぜる)と、全房発酵(茎が付いたまま房ごと使う)によって、複雑性や奥行きのある味わいを感じるワイン。ブドウ畑を丸ごと味わうようなワインは「ラムのパイ包み」に。

 左・「カルカリウス ソウルグロウ 2020」(イタリア・プーリア州)

土着品種のプリミティーヴォを100%使用したロゼに近い淡い色の赤ワイン。こちらも全房発酵で造られる自然味たっぷりのワイン。果実味に溢れ、ナツメグ等のスパイス感もあり。「タコのゴラカ」煮込みと味わいたい。

 コースの最後には是非、スリランカのティーを味わってください。7大生産地(キャンディ、ウダブッセラワ、ウバ、サバラガムワ、ルフナ、ヌワラエリア、ディンブラ)から選ぶことができます。

HOPPERS」のスタッフの皆さん。右から、スリランカとドゥバイでも料理人をしていたマヘッシュ・ラサンタさん、オーナーシェフの伊藤一城さん、金川麻菜さん。

 近年のスパイスブームでスリランカ料理、インド料理、ネパール料理の店も増えて、インド料理に至ってはゴア地方、バンガロール地方など細分化された料理も知られるようになったにも関わらず、スリランカ料理がいまひとつ浸透していないことにもどかしさを感じていた伊藤さんは、この店で正統派のスリランカ料理と、まだ日本には無いモダンなスリランカ料理を発信していきたいとのこと。ポイントは、スリランカと日本のプロの料理人(伊藤さんはフランス料理店でも研修)が作ることと、日本人のフィルターを通す=日本の食材を使うこと。スリランカ料理はさまざまな野菜をたくさん使うため、契約農家から新鮮で上質な野菜を仕入れているそうです。スリランカ料理って、とてもヘルシーなのです。

スリランカの食文化やスパイス料理の可能性ほかたくさんのことを教えてくれる、魅力溢れるモダンスリランカ料理を味わいに出かけてみませんか。

DATA

HOPPERS(ホッパーズ)

東京都中央区日本橋兜町7-1 KABUTO ONE 1F

☎03-6890-1547

営業時間:11:0015:0014:00 L.O.)、18:0023:0020:30L.O.

休:水曜

ランチは「ライス&カレー」(¥1,650)、ディナーはコース(¥6,600)を提供。

「ライス&カレー」¥1,650 ※提供はランチタイムのみ

 2021126OPEN

 

撮影/牧田健太郎、取材・文/齊藤素子、構成/中村 亮

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