モキチのブログ 「ひと皿」の向こう側

PROFILE

「モキチ」ことライター齊藤素子。銀座・泰明小学校卒業。OLやギャラリー勤務を経て、
1995年『VERY』創刊時にライター稼業を始める。食や旅のページを中心に雑誌やWEBで活躍中。
その一方で、世界初の腰痛専門WEBマガジン『腰痛ラボ』では編集長を務める。

【RESTAURANT】ひと皿の向こう側/Niru 後篇

Update : 2020.10.20
keyword:

自然派ワインとともに味わう多国籍で軽やかな煮込み料理

調理法を店名にした「Niru」、料理がイメージしやすく、ほっこりと心地好さそうで覚えやすい、いい店名です。

_MG_8731

実は、ロゴをよく見ると「U」の下に炎が描かれていて煮込み中(笑)。可愛らしいです。

_MG_8793

キッチンに面したカウンターが中心の店内。カウンター8席、窓側カウンター4席。路地からは、ガラス越しに人々が食事をする様子が眺められます。

前篇でご紹介したのはこちら、軽めの自然派白ワインと好相性の「鶏モモ肉の塩レモン煮込み ターメリック風味」(¥980・税別)
_MG_8720
(鶏モモ肉の塩レモン煮込み)

_MG_8729
(塩漬けレモン)

柔らかな鶏モモ肉の美味しさを引き立てるのは、塩漬けレモンのほどよい酸味とターメリック&生姜の風味。要となっている調味料は、モロッコの家庭料理に欠かせない発酵保存調味料の塩漬けレモン(レモンコンフィ)。モロッコ料理好きの方にはお馴染みの調味料だと思います。発酵しているので少しトロリとしてて、仕上げにレモンを絞りかけるのとはまったく異なる酸味と香り。優しいけれどキレとコクがある……そんな調味料です。

 20数種あるメニューのうち、定番メニューと季節のメニュー(日替わり)が半々。こちら、冷菜の定番メニューから「ウフマヨ トリュフ風味」(¥350・税別)です。

 _MG_8735
_MG_8754

半熟卵に卵のソースとトリュフオイルをまとわせて、生胡椒を2粒のせます。カットすると黄身がトロ〜リ。卵とトリュフの相性の良さはよく知られていますし、ウフマヨ もフランス料理の前菜の定番。美味しくないわけがありません。

最初は、3粒のせられていた生胡椒ですが「顔みたいで可愛い!」という意見が多かったため2粒に変更(写真上)。確かに何か話しかけてきそうです。「とりあえずウフマヨ 」という人が多い、人気の冷菜なのです。 

_MG_8747

 こちらも定番メニューより「トリッパとドライトマトの白ワイン煮込み」(¥980・税別)。メニューには白ワインとありますが、実はオレンジワインで煮込んでいるそうです。お店で供されるワインのラインナップの中心である軽めの白ワインに合うように、定番的なトマト煮込みではなくドライトマトと鶏のブイヨンを使ったさっぱり系のトリッパ。

 _MG_8764

こちら「ササミとツナの揚げ春巻き シナモン風味」(¥900・税別)は、モロッコの家庭料理で“ブリワット”という三角形の春巻き。ササミとツナというさっぱりした具、そこに加えたクミン、カラッと揚げたて。

仕上げに振りかけたシナモンの効果もあって、揚げ物ですがとても軽やか。でも、ササミとツナの旨みはしっかりと味わえます。ライムをたっぷりと搾っていただきます。 

_MG_8768

店主・佐保秀郁さんお気に入りのワインをご紹介しましょう。

右:「ラヴィ ポップ ロゼ 2019」(ヒトミワイナリー)山形県産スチューベン50%、シャルドネ50%
日本産生葡萄を100%使用して濾過をしない“にごりワイン”のスタイルで生産している滋賀県のワイナリー。華やかと軽やかさのあるまさにポップな印象のロゼ。微発泡の優しくプチプチとした泡感が心地よい。綺麗なロゼ色に気分も上がります。ボトル¥5,800、グラス¥980(ともに税別)

左:「セミ カーボニック マセレーション 2019」(ウッディファーム&ワイナリー)メルロ65%、カベルネ・ソーヴィニヨン21%、カベルネ・フラン14%
ウッディファーム&ワイナリーは、山形県かみのやま市にあるドメーヌスタイル(※)のワイナリー。ボジョレー・ヌーヴォーと同じく、炭酸ガスの中で発酵させる醸造法=マセラシオン・カーボニックで造られたワインは、フレッシュ感がありとてもフルーティー、穏やかで丸みのある味わいです。ボトル¥5,800、グラス¥980(ともに税別)

_MG_8790

「お酒を飲みながら仕事をするのが夢でした(笑)」(佐保さん)残念ながら、孤軍奮闘するキッチンでお酒を飲む余裕はまったくないけれど、カウンター越しに交わすお客さんとの会話は楽しいのだとか。

話題の飲食店で供される料理やその店に流れる空気などを知っておきたいと、仕事の合間を縫って、食べ歩きに多くの時間を費やしているという佐保さん。“軽やかな煮込み料理”を柱とし、定番メニューで「Niru」の味を覚えてもらいながら、日替わりメニューで楽しませる。モロッコ、タイ、イタリアなど、さまざまな国の料理の魅力をしっかりと残しながら加える、絶妙なひと捻りによって、どれもが「Niru」の料理になっています。気軽に立ち寄ることができる、美味しい店がリストにひとつ増えて嬉しい!

 

_MG_8797

【DATA】
Niru
東京都渋谷区東1-25-5 1F
☎03-6450-6014
営:18:0022:3021:30 food L.O.
休:日曜・祝日*予約はインスタのDMで。
※当日のみ電話予約可。

https://www.instagram.com/niru_shibuya/

 

 ※ドメーヌスタイルとは、ぶどうの栽培から醸造・瓶詰めまですべてをおこなうこと。

前篇はこちらから

撮影:牧田健太郎 取材・文/齊藤素子 構成/松本朋子

NEW ENTRY

  • 2023.09.04

    お待たせしました!人気連載『ハルマキ100本ノック』本が発売・・・

  • 2022.12.28

    「O2」大津光太郎さんの蒸すから自由でおいしい家中華⑥

  • 2022.12.22

    「O2」大津光太郎さんの蒸すから自由でおいしい家中華⑤

  • 2022.12.16

    秋の「界 松本」「手業」と「いい湯」をめぐる旅 Vol.2

  • 2022.12.16

    【Flower cycle Art】12月の花 かすみ草 /・・・