連載&レコメンド

今だから、心に響く言葉④――HERSアーカイブから

Update : 2020.05.12
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バックナンバーからの名言集。
2008年10月号から。
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表紙の伊藤蘭さん。

「そう、50代で改めて元気になった気がするんです。ほら、40代って、なんとなく30代の感覚を覚えているから、『あら? こんなに疲れるはずじゃないのに……』なんて、思ったり。その点50代は、気持ちも、体をいたわる余裕もできる。“ちょうどよく大人”で、まだ頑張ろうと思える元気もあるんです。」
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肩の力が抜けて、自分のペースがつかめるようになるということなのかもしれませんね。
だから、このように続けます。

「心に枠がはめられることだけは嫌ですね。そう、心は自由なのがいちばん。明日は何もすることがない、という日の幸せったらないから(笑)」

そして、50代になって人生の「滋味」を味わえるようになったというのが樋口可南子さん。
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「『50になるって、どんなことだろう』と不安に思っていたんですね。女性として、もう終わりなのかしら。お婆さんに近づくのが負担になってくるのかな……なんて。

ところがいざそうなってみると、不思議なことに、これまで頑張って生きて仕事をしてこられたことが、すごくありがたく思えるんです。この先を心配するより、『今までの自分に、ありがとう』みたいな。……ちゃんとやってこられたじゃない! そう思ったら、なんだかほっこり嬉しくなってしまったんですよ。」

なにかを成し遂げてきた一方で、もちろん反省していることだってあります。
作詞家としてゴダイゴの「Monkey Magic」や「ガンダーラ」を手がけ、キャスティング・ディレクターとして渡辺謙の『ラストサムライ』に関わり、はたまた演出家、映画監督としての顔も持つという多才な奈良橋陽子さん。
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インタビュー連載「書きかけの履歴書」で吐露しています。

「やはり親は子供に必ず謝りたいことはあると思います。もっと一緒にいればよかったとか。」

奈良橋さんが第一線で活躍していた頃は、まだまだ外で働くお母さんが少なかった時代でしたが、
そんな人生を振り返りつつ、初孫が生まれたばかりだった取材時の心境は――

「孫と娘を守らねばというエネルギーが強烈に湧いてきました。」

この号では、アートディレクター、デザイナー、ヴィジュアルアーティストの石岡瑛子さんのスペシャルインタビューも収録。
同年に行われた北京オリンピックの開会式も手がけたコスチューム・デザイン界のレジェンド。1993年には『ドラキュラ』でアカデミー賞も受賞しています。
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日本の広告業界での華々しいキャリアを捨てて、40歳でNYに移った理由を聞かれた石岡瑛子さん。

「毎日がマンネリで、心が冷えていくほうがよっぽど怖い。剣の道と同じです。私の大好きな宮本武蔵のように、常にアウトローでいたいのです。常にゼロ地点に立っていたいし、自分がかなわないと思える相手と勝負をしていきたい。そうじゃないと、クリエイターとしても人間としても成長していきませんから。」

さらに続けます。

「人生をエキサイティングに切り開いていこうと思ったら、不安も恐怖も喜びもすべてカラフルにやってくるのは当然のこと。不安を恐れていたら何もできません。」

世界を股にかけるハードな仕事。そのエネルギーの秘訣は朝の過ごし方にあると語ります。

「どこにいても、毎朝自分で決めたプログラムをきちんと実行してから仕事に向かうようにしています。健康的な食事をし、ストレッチをし、好きな音楽を聴きながら朝風呂に入ってリラックスする――この“モーニング・アクト”をすべてきちんとこなすと2時間かかります。」

お召しになる服は黒が多いですよね。という質問に対しては――

「私は表舞台に立つ人間じゃなくて裏方ですから、昔から忍者みたいな恰好をしています。とにかくモノも服もいらない……大量のモノを抱えたり、何かをコレクションしたりすると、人生が重くなってしまう。理想はノマド(遊牧民)のような、最低限のモノだけを備えた身軽な生活。」

石岡瑛子さんは、性別や年齢で括られる社会にも異を唱えていました。

「“年相応”なんてナンセンスな言葉ですよ。みんなもっと柔軟に、年齢に振り回されない生きかたをすれば、毎日がハッピーになりますよ。」

やはり大切なのは、自分のペースなのだと語ります。

「周りと比べないで、自分は自分のペースで生きていけばいいんです。50歳なんてまだまだこれから。まだ何十年も先がある。自分のペースで人生を歩んでいけるのは、まさにこれからだと思います。」

*石岡瑛子さんは、2012121日に73歳で逝去されました。

前回の記事はこちら。

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構成・文/川原田朝雄

 

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