モキチのブログ 「ひと皿」の向こう側

PROFILE

「モキチ」ことライター齊藤素子。銀座・泰明小学校卒業。OLやギャラリー勤務を経て、
1995年『VERY』創刊時にライター稼業を始める。食や旅のページを中心に雑誌やWEBで活躍中。
その一方で、世界初の腰痛専門WEBマガジン『腰痛ラボ』では編集長を務める。

世界を目指す日本酒ベンチャーの発信地/「ひと皿」の向こう側

Update : 2019.03.13
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近年、ビールの醸造所を併設した酒場、brew pub(ブルーパブ、「brew」=醸造の意味)が急増し、人気を博しています。できたてのオリジナルビールを味わい、楽しむことができるようになってクラフトビールの消費量もぐんぐん伸びているとか。

昨年7月にオープンした【Whim SAKE & TAPAS】もそんなブルーパブですが、造られているのはビールではなく“どぶろく”、場所は三軒茶屋の商店街というのがちょっと驚きです。

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20坪の店内の4.5坪が醸造所、テーブルからガラス越しに醸造所を眺めることができます。普通なら出会うことのない造り手と飲み手が、ガラス一枚という近い距離で存在。私たち飲み手は、できたてのどぶろくや委託醸造によるオリジナルの酒を味わいながら、自然と“酒造り”を身近に感じるはず。

運営は、米どころ山形県鶴岡市に拠点を置く日本酒ベンチャー企業の「WAKAZE」。日本酒を世界酒にすることを目指すさまざまな取り組みが注目を集めています。

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ここ、三軒茶屋醸造所で造られるのはどぶろく。“クラフトどぶろく”とも呼ばれるそうです。壁にはイラストとともにその工程が紹介されています。

  • 精米(米は亀の尾、つや姫など、主に飯米を使用)→ ② 洗米&浸漬 → ③ 蒸し→ ④ 仕込み(仕込み水は三軒茶屋の湧き水を使用)→ ⑤ 発酵→ →⑥瓶詰→(出荷用には火入れを)。

このフレッシュなどぶろくが味わえます。3週間〜1カ月で完成です。

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店名にはタパスとありますが、しっかり食事もできるラインナップです。誌面で紹介したのはこちら「どぶグルト(どぶろく×ヨーグルト)チキン」(¥980)。どぶろくとヨーグルトに漬けて柔らかくした鶏肉をサクッと香ばしく焼き上げた一品。この食欲をそそる香りが注文の連鎖反応を生むのだとか。わかります(笑)

 

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お勧めのペアリングドリンクはこのお酒、委託醸造による「WAKAZE」オリジナルのボタニカルSAKEFONIA TERRA〜大地」(グラス¥950)です。

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ここで、「どぶろくはここで醸造しているのに、こちらはなぜ委託醸造なの?」と、不思議に思われた方は多いはず。実はこれには、わが国の日本酒にまつわる事情が関係しています。

近年、日本酒(清酒)酒造の新規醸造免許はまず降りないと言われています。つまり新しい酒蔵を立ち上げることは相当に困難というか、不可能に近いらしい。三軒茶屋醸造所で醸造しているどぶろく(=濁酒)とは「米、米こうじ及び水を原料とし発酵させたもので、こさないもの」。日本の酒税法では「その他の醸造酒」にあたり、それはそれで免許が必要なのですが、これをろ過して清酒にするためには、どぶろくとは別の醸造免許が必要になってしまうというわけです。

そして、清酒を造るための醸造免許が新規に取得するのが難しいのならば……と、山形の酒蔵に依頼してオリジナルのレシピを使った日本酒を製造。つまり委託醸造に。発酵の過程で副原料を加えるのであれば、どぶろく同様「その他の醸造酒」になるのだそうです。

 

ボタニカル酒「FONIA TERRA〜大地」は、発酵の途中で副原料(生姜、山椒、柚子)を加えて調和させたもの。

アルコール度数:14%、掛米(もろみ造りに使われる米):ササニシキ、麹米(米麹を造るために使う米):亀の尾、水酛仕込み。

スパイシーな香りと力強い味わい。ラム等、クセのある肉料理や香草を効かせた料理と好相性。

 

「人参と干し柿のサラダ」(¥550)は、山形県庄内の農家から直接仕入れた干し柿を使用。どぶろくとのペアリングを想定した一品で、どぶろくに合うように、ドレッシングは酸味を効かせ過ぎずマイルドな味わいに。ちなみに、どぶろくのアルコール度数は9度です。

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フレッシュ感があり、プチプチとした感じも心地よい、三軒茶屋のどぶろく~杏仁~(¥650)。どぶろくとビールを合わせた「どぶビー」もお勧めです。

 

「クリームチーズの酒粕味噌漬け」(¥550)は、WAKAZEオリジナルの酒に漬け込んだクリームチーズ。コクがあってキレもある(!?)お酒がすすむ一品。

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ゆっくりと焼きあげるためジューシーで噛みしめるごとに旨味が広がります。「庄内豚のハムステーキ」(¥980)同じく庄内産の長芋のグリルを添えて。

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こちらで味わえるオリジナル酒のラインナップ。8種類をご紹介。

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右から、① ボタニカルSAKEFONIA TERRA〜大地」、②「FONIA SORRA〜天空」(掛米・麹米:出羽燦々、副原料:柚子、山椒、檸檬、白麹四段仕込み)、③「FONIA SORRA sparkling〜天空」*微発泡の心地よい刺激。ワイン造りに使用したオーク樽に入れて熟成させた日本酒「ORBIA」の3種。④「ORBIA GAIA」(掛米:酒の華、麹米:出羽の里、変則三段濃醇 生酛仕込み *バランスがよく濃醇な酸味・甘み・旨味の三拍子が揃う。⑤「ORBIA SOL」(掛米・麹米:総の舞、高温山廃一段仕込み *フレッシュな酸味と複雑な香り。⑥「ORBIA LUNA」(掛米:雪化粧、麹米:酒の華、貴醸酒仕込み *濃厚な甘みとフルーティな香り。⑦「三軒茶屋のどぶろく~杏仁~」、⑧ 「三軒茶屋のどぶろく〜chocolate〜」通称「チョコどぶ」は、副原料にバニラ、カカオ、クローブ、カカオリキュールを使用。甘く優しい香りとカカオのコクが調和したどぶろく。

 

こうして、委託醸造でオリジナルの酒を造り、都心の小さな醸造所でどぶろくを造る。新しい発想と企画力、熱い想いと行動力で困難な酒造りの道を着実に切り開いているWAKAZEのメンバーたち。さらに、「日本で造れないならフランスで造ろう」ということで、現在パリでの酒造りの準備が着々と進行中です。フランスの米(フランスの米どころカマルグの米)で酒造り! 素敵です。もう、夢を見ることもなくなってしまった50代私としては「わあ、なかなかやるじゃない!」と、しみじみ感心して、応援したくなります。

店名のwhimとは、ちょっとした思いつきという意味だそうですが、大切にして来たさまざまなwhimが大きな夢に繋がる道を開いた、ということもあるのでしょうでしょう……WAKAZEが目標に掲げた「日本酒を世界酒に」。決して夢で終わることはなさそうです。自分のことのようにワクワク、ドキドキするのは私だけではないはず。

 

日本酒業界に新風を吹き込むWAKAZEのメンバーたち。

右から、店長の佐藤拓海さん、営業担当の安田ふみさん、杜氏の今井翔也さん、デザイナーのYORIKOさん、東京農業大学の学生、山口歩夢さん。

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杜氏の今井さんは、実家である群馬「聖酒造」をはじめ、秋田県「新政酒造」、富山「枡田酒造店」、新潟「阿部酒蔵」で計3年間酒造りを学びました。

青山から山形に移り住んだという代表取締役CEOの稲川琢磨さんは、醸造所のオープン準備のため渡仏中。

 

Whim SAKE & TAPAS(ウィム・サケ・アンド・タパス)

東京都世田谷区太子堂1-15-12   03-6336-1361

18:00〜23:00L.O.22:30

日曜は15:0021:00L.O.20:30)水曜休 2018728OPEN
撮影/牧田健太郎 取材・文/齊藤素子 編集/川原田朝雄

 

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筆者プロフィール:
「モキチ」ことライター齊藤素子。銀座・泰明小学校卒業。OLやギャラリー勤務を経て、1995年『VERY』創刊時にライター稼業を始める。食や旅のページを中心に雑誌やWEBで活躍中。その一方で、世界初の腰痛専門WEBマガジン『腰痛ラボ』では編集長を務める。

 

 

 

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