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温泉旅のスペシャリスト 石井宏子の‟通な温泉旅” 由布院温泉 編

Update : 2020.03.23
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大人だからこそ楽しめる温泉旅があります。訪れたことがある人も多い由布院温泉ですが、だからこそ「いま」最も旬な由布院の楽しみ方を知りたいですよね。由布院温泉周辺には5つの温泉があり「湯布院温泉郷」として国民保養温泉地に指定されています。力のある温泉に入り、旅の時間を楽しんで心身を癒やす温泉旅を、一年の半分は国内外の温泉地に出かけている、温泉旅のスペシャリスト・石井宏子がご紹介します。

■いきなり手ぶらで由布院散歩
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到着したら、由布院駅のお隣にある由布市ツーリストインフォメーションセンターへ。建築家・坂茂氏設計の光あふれる建物が素敵です。2階の旅の図書館へ上がると、坂氏らしい紙管のチェアに腰かけて由布岳が目の前に眺められます。立ち寄った理由は「ゆふいんチッキ」、ここで荷物を預けて身軽になってそのまま散策に行けるのです。1600円で宿泊する宿へチェックインの15時までに運んでくれます。

◎由布市ツーリストインフォメーションセンター
大分県由布市湯布院町川北8-5
電話:0977-84-2446
http://yufu-tic.jp/tic

■完全予約制「特選牛箱弁当」とは?
旅館「玉の湯」の脇の細い道「櫟(くぬぎ)の小径」を進むと、小宿・はなの舞に到着。お目当ては食事処「旬菜 鄙屋」の完全予約制のランチ「特製牛箱弁当」です。
変換 ~ 2
最初に豆乳豆腐と野菜の小鉢。温かな豆乳豆腐は、ほんのり豆の甘さを感じてほっと和みます。これは、食事の最初に食物繊維や植物性たんぱく質を摂取してという食養生にもかなっていてうれしい。
上品な小箱の蓋をあけると、九州産黒毛和牛がつややかに現れます。やわらかで旨みたっぷり甘辛の特製たれとゴマ、小葱のバランスが絶妙、薬味のミョウガ、柚子胡椒おろし、わさびが、味わいをリズミカルにしてくれて、ひと口、またひと口と箸がすすみます。
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「やっぱり、こうなるわよね。」と、憧れの肉巻きごはん。ジューシーな肉の旨みとお米の美味しさが口いっぱいに広がって、思わず目を閉じて味わってしまいます。

◎ゆふいん山紫御泊処 はなの舞 旬菜鄙屋
大分県由布市湯布院町川上2755-2
電話:0977-84-5700
特選牛箱弁当は前日までの完全予約制(木曜定休)
http://www.hananomai.net/meal.html

■金鱗湖が最も輝く秘密のスポット
変換 ~ 4
金鱗湖までのんびりお散歩。観光客の流れは由布岳を正面に左側へと進みますが、実は、最もおすすめしたい風景は反対の右側にあります。亀の井別荘の横を通り、さらに湖畔を進むと金鱗湖も含めてご神域とされる天祖神社へ到着。
変換 ~ 5
お参りをしたら本殿の裏側へまわってみましょう。キラキラと金色の龍の鱗のように水面が輝く金鱗湖の風景に出会えます。

■フレッシュハーブティで整える
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支流の大分川の小径は、静かな散策が楽しめる大人の裏通り。川に白鷺が舞い降りたり、野生のクレソンが茂っていたり、きれいで豊かな水を感じます。亀の井別荘のショップ「鍵屋」に立ち寄って、雑貨を見たり、生の柚子胡椒をお土産に調達して、玉の湯までぶらり。今の季節は玉の湯の「ティールームニコル」で地元のフレッシュハーブのハーブティが楽しめるのです。ここ数年かけて、敷地の森に木を200本増やしたという玉の湯は、前よりも小鳥の声がたくさん聴こえるようになったとか。ティールームから森を眺めて、フレッシュハーブティで体の流れを整えます。アップルパイも有名ですが、最近登場したブルーチーズケーキもおすすめ。甘くない大人の味わいで、由布院のはちみつをお好みでかけていただきます。ここでタクシーをお願いして少し離れた今宵の宿へ向かいます。

◎由布院玉の湯 ティールーム ニコル
大分県由布市湯布院町川上2731-1
電話:0977-84-2158
9:00-17:00(平日) / 10:00-16:30(土・日・祝日)
https://www.tamanoyu.co.jp/publicspace/

■名旅館がモダンにリニューアル
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全面建て替えをして20192月にオープンした「山荘わらび野」は、驚きの変貌をとげました。第一印象はスタイリッシュな現代アートのよう。ところが、実際に泊まってみると森や自然に包まれているような温かさを感じるのです。
変換 ~ 8
コンクリートのキューブのように見えた建物は、近くで見ると木の風合い。杉の丸太を型枠にしてコンクリートを流し込む工法で、自然の木の持ち味が映し出された彫刻のようになっています。
変換 ~ 9
室内は、石張りなのに裸足で歩ける温かさ。大分産の日田石の床は床暖房になっているのですっきりしているのに温かくて気持ちいい。石の不思議なぬくもり空間に大きなソファ。腰かけると目の前に由布岳を眺める最高のロケーションです。リビングのテーブルには、ウエルカムスイーツの「カヌレ」。外側はカリッと、中はもっちりとしていて程よいサイズ。カヌレはオリジナルで、由布院駅前通りにこの宿の直営店「カランドネル」があります。
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メゾネットラグジュアリースイートは、1階の半露天風呂の他に、2階にも露天風呂があり、由布岳の絶景を独り占め。泉質はアルカリ性単純温泉で、とろりとしたやわらかな肌触り。肌の古い角質をおとしてなめらかに整える美肌の湯です。二人で泊まって、1階と2階、別々の温泉をひとりずつが独占なんていう贅沢な過ごし方もできます。朝日が反射して刻々と色を変える由布岳の姿が忘れられません。

■佐賀関漁港直送の魚を満喫
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スタイリッシュ空間にTANNOYのこだわりスピーカーから流れる心地よい音楽。優雅な晩餐の始まりです。大分近海の魚や由布院の野菜の素材の美味しさが主役の日本料理。それがむしろ本物を知っている旅人にはうれしく感じられます。佐賀関漁港直送の新鮮なお造りは、関アジ、真鯛、カンパチ。カボスをしぼっても雫を跳ね返すような身のしまりと脂ののりには、九州の濃いめの醤油があいます。からすみだいこんをハミハミと味わいながら、白ワインをいただきました。変換 ~ 12
大分和牛のローストはごぼうソースが絶品。のどぐろは、西京味噌につけこんで揚げ、6種類の野菜が入った餡かけをからめた一皿で。
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しめは、わらび野名物となった、自家製米のりゅうきゅう。「りゅうきゅう」とは、新鮮な魚を甘辛く漬けにして胡麻などで味付けしたものを熱々ごはんにのせていただく大分の郷土料理。今日は、鯛、さわら、カンパチの漬けを釜炊きごはんにのせて、とろろもかけて、ぱくり。おなかいっぱいと言っていたのに、さっぱりと美味しくいただいてしまいました。

◎山荘わらび野
大分県由布市湯布院町川北952
電話:0977-85-2100
http://www.warabino.net/

 ■旅の途中で立ち寄りたい、薬湯・塚原温泉
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由布院温泉から別府方面へ向かう途中の塚原高原エリア。湯布院温泉郷のひとつである塚原温泉は、古くから湯治の薬湯としても愛されてきました。伽藍岳の中腹にあり、徒歩5分ほどで行ける、もうもうと噴気があがる火口は必見。こんなに近くで迫力の噴気孔が見られる場所は大変珍しいのです。
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平安時代に開湯した塚原温泉は、酸性・含鉄(Ⅱ、Ⅲ)-アルミニウム-硫酸塩泉。鉄分やアルミニウムなど鉱物成分が多く、pH1.9の強酸性で由布院温泉とは全く異なる泉質です。酸性の温泉は殺菌作用と肌の活性化作用が期待でき、豊富な鉄分で体の芯までしっかり温めて発汗を促し、代謝をサポートします。新鮮な源泉が注がれる湯船の温泉の色は緑色がかった透明。鉄分を多く含む温泉は、時間とともに空気に触れて赤く濁っていきますが、新鮮さが際立つ塚原温泉ならではの色です。塚原温泉火口乃泉は、男女別の内湯、露天風呂の他に、貸切で入れる家族風呂もあります。1棟だけの離れ家族風呂は、ぬるめと熱めの2つの湯船があって贅沢です。
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見つけたら「即買い」なのが塚原温泉のむし卵。超人気で売り切れていることが多いですから、もし、見かけたら即座に入手してください。大変珍しくて美味しいのです。もうもうと吹き上がる塚原火口の噴気で20時間蒸してつくる貴重な名物卵は、殻をむいてビックリ、白身が琥珀色に変化しているのです。わってみると中までしっかり琥珀色。麦焦がしのような芳ばしい香りと深みのある味わいがとても美味しい。温泉のミネラルもしっかり入っていて元気がでます。

◎塚原温泉火口乃泉
大分県由布市湯布院町塚原1235
電話:0977-85-4101
https://www.tukaharaonsen.jp/

 

撮影・取材・文/石井宏子

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石井宏子
旅行作家・温泉ビューティ研究家。温泉・食事・自然環境を通じて美しくなる温泉ビューティウエルネスを研究。年200日ほど国内外の温泉を旅して取材・執筆・講演を行う。著書に「感動の温泉宿100」「全国ごほうびひとり旅温泉手帖」など。 https://www.onsenbeauty.com/

 

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