モキチのブログ 「ひと皿」の向こう側

PROFILE

「モキチ」ことライター齊藤素子。銀座・泰明小学校卒業。OLやギャラリー勤務を経て、
1995年『VERY』創刊時にライター稼業を始める。食や旅のページを中心に雑誌やWEBで活躍中。
その一方で、世界初の腰痛専門WEBマガジン『腰痛ラボ』では編集長を務める。

モキチのブログ 「ひと皿」の向こう側

Update : 2018.08.22
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はじめまして。
9月号から本誌で始まった新連載「ひと皿の向こう側」担当ライターのモキチこと、齊藤素子です。
ただの食いしん坊です。

酔ったときの口癖は「食は文化だ!」、あるいは「お酒は文化だ!」(暴飲暴食の言い訳に過ぎませんが……)。
各種飲食店でこう叫んでいる眼鏡・丸顔・短髪の者を見かけられましたら是非、お声がけください。

この連載では、“ひと皿の向こう側”に見える、今の時代の空気感、その料理のさまざまな背景などをご紹介できればと思っておりますが、簡単に言うと、私が好きなお店と料理を紹介する連載です。
そして、こちらのブログでは本誌よりさらに向こう側に迫るつもり?です。

 

今回ご紹介するのは【NODO(ノード)】。

神楽坂に4月にオープンしたイタリア料理店ですが、イタリアにある20州の中でも、日本での知名度でいえばマイナーチームに入る、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の料理とワインを提供してくれます。

誌面で掲載したのは、こちら「チャルソンス 貴族のソース」でした。

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なぜ、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州なのか?

神楽坂で【スカンピ】(ヴェネト州の料理店)、【イルボッリート】(エミリア・ロマーニャ州の料理店)も経営するオーナーの及川博澄さんに尋ねてみました。

「南のもっとメジャーな州――例えばシチリア州、サルデーニャ州なども考えましたが、日本と違って他国と陸続きで食文化にもその影響が現れている北部の州が面白いなと思いまして……」(及川さん)。

そして、隣国と国境を接するイタリア5州の中から選んだのが、オーストリア、スロベニアに国境を接するフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州だったというわけです。

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シェフの井谷謙太さんは、イタリアで3年間修業。
フリウリヴェネツィア・ジュリア州では、郷土料理を積極的に学んできたそうです。

かなり個性的な料理も多いので、どこまで地元色を出すべきか悩んだそうですが、できるだけ日本人の好みに寄せることはせず、8割は現地の味のままでいくことに。

「美味しい、美味しくないということだけでなく、どうしてこの味、この料理なのか――その理由になる現地の地形、気候や風土、そして歴史なども知っていただけたら楽しいのではないかと思って……」(井谷さん)。

 

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この肉料理は「リュブリャンスカ」と言います。
料理名がイタリアじゃない!……スロベニアの影響を感じる一品。

牛ヒレ肉のカツレツ。中身はチーズとプロシュットです。
レモンソースとルッコラのスプラウト、コリアンダーの花で爽やかに。

 

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フリウリ=ヴェネツィア・ジュリアといえば、「プロシュット・ディ・サン・ダニエーレ」!
DOPです。生ハムを扱う料理人垂涎の「BERKEL」のスライサーで、極上のプロシュット・ディ・サン・ダニエーレをカットする浅野拓也シェフ。
「プロシュット・ディ・サン・ダニエーレは生産数が少ないので特に日本では希少なプロシュトです。

18か月〜24か月熟成させるパルマのプロシュットに比べて、サン・ダニエーレは熟成期間が14か月くらいと短いので、香りが繊細でフレッシュ感があります」(浅野さん)。

 

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こちらがその「プロシュット・ディ・サン・ダニエーレ」。
旨みが強く、少々筋のあるスネ[ガンベット]の部分は、噛みしめて味わえるように少し厚めにカット(手前)。
霜降りでとろけるような食感を楽しみたいオシリ[クラッチャ]の部分は薄めにカット(奥)。

 

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また、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州はイタリアの中でもワインの宝庫として知られています。
こだわりの強い造り手が多く、とりわけ白ワインが面白い。
造り手の写真を見ながらワインの説明を伺うと親しみが湧いて、いろいろ飲んでみたくなります……。

右の写真は、右から、「ラディコン ヤーコット2007」地元でも有名な自然派を代表する造り手。
ぶどうの皮も種もあますところなく使い、渋みが強めで味わいの幅も広い白ワイン。

「テルピン リボッラ・ジャッラ2008」地元品種のリボッラ・ジャッラを100%使用した濃い琥珀色の白ワイン。
コストパフォーマンスがいい!

「ザゴ アイ キュベ」造り手はなんとビールの生産者。
低温殺菌されていないピュアな大麦を使用、麦芽の甘さも感じられる黒ビールに近い発泡ワイン。

 

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そしてこちらは、「グラヴナー ヴィアンコ ブレッグ2007」。
造り手は地元のカリスマ生産者、ヨスコ・グラヴナーさん。
ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリージョ、シャルドネ、リースリング・イタリコを使用。

美しい琥珀色をしています。グラスは、世界最古のワイン生産地の一つであるジョージア(グルジア)の陶器の酒器に倣い、グラヴナーさんが自らデザインしたそうです。

 

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右から、オーナーの及川博澄さん、井谷謙太シェフ、浅野拓也シェフ。
フリウリ=ヴェネツィア・ジュリアの料理やワインについて、明るく、丁寧に説明してくれます。

【NODO(ノード)】
東京都新宿区袋町3/TEL03-6228-1149/17:00〜26:00(土日15:00〜24:00)、日休

撮影/牧田健太郎 取材・文/齊藤素子 編集/川原田朝雄

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筆者プロフィール:
「モキチ」ことライター齊藤素子。銀座・泰明小学校卒業。OLやギャラリー勤務を経て、1995年『VERY』創刊時にライター稼業を始める。食や旅のページを中心に雑誌やWEBで活躍中。その一方で、世界初の腰痛専門WEBマガジン『腰痛ラボ』では編集長を務める。

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