モキチのブログ 「ひと皿」の向こう側

PROFILE

「モキチ」ことライター齊藤素子。銀座・泰明小学校卒業。OLやギャラリー勤務を経て、
1995年『VERY』創刊時にライター稼業を始める。食や旅のページを中心に雑誌やWEBで活躍中。
その一方で、世界初の腰痛専門WEBマガジン『腰痛ラボ』では編集長を務める。

祖父と父への思いが詰まった、神田育ちのシェフの店/「ひと皿」の向こう側

Update : 2018.11.19
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「こういうお店を待っていた!」と、喜ぶ食いしん坊の“大人”は多いはずです。なぜなら、洗練されたガストロノミーレストランの料理が、肩の力を抜いて食べられるのですから。その料理に合わせて提案される自然派ワインもお楽しみ。

「でも、そういうお店ってたくさんあるでしょう?」という声も聞こえてきそうですが、ビストロというのとはまた違う、もっとさりげない……ファッションで例えるならば、上質なスマートカジュアル(ちょっと懐かしいですか?)、つまり経験とセンスが問われる微妙な路線を極めている店なのです。アラカルトでもオーダーできる【yaoyu】のメニューには、「二軒目にもどうぞ。気軽に立ち寄って料理とワインを楽しんでください」という鳥海智史シェフとソムリエの奥様、幸子さんの思いが込められています。
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誌面でご紹介したのは「イタリア仔牛タン」です。“ソミュール”には通常、赤ワインは入れませんが、鳥海シェフは香りづけのために使用します。食材の知識とフランス料理のさまざまなテクニックが盛り込まれたひと皿ですが、あくまでもさりげない感じが心地よい。この感じは【yaoyu】そのものだと思うのです。

階段を降りると現れる、舞台のようなオープンキッチン、壁面に並ぶワインボトルが印象的なモダンでドラマチックな店内。テーブルの素材は材木屋さんで一目惚れしたというボセ。4メートルの一枚板を大胆かつ贅沢にカットして使用しているテーブルも。
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【yaoyu】(※ヤオユと読みます)があるのは神田錦町。神田生まれ、神田育ちの鳥海シェフには特別な場所です。料理人を目指すきっかけにもなったという、お祖父様が営む洋食店も神田錦町にありました。「小学校3年生の時の文集に“将来の夢はオーナーシェフになること”と書いてました(笑)。亡くなった父がこの近くで“八百勇”という八百屋をやっていましたし、日本で自分の店を持つのならこの辺りにしようということは決めてました」(鳥海シェフ)

店名は、シェフのパリ修行中に亡くなられたというお父様へのオマージュ。そして、階段に映し出される「8571」という数字は、お父様が使われていた市場での競りの番号なのです。パリの名店【シェ・レザンジュ】のシェフとして、仕入れからメニューの決定まで全てを任されていた鳥海シェフ。そのキャリアを一旦すべてゼロにして、日本でスタートしたシェフを支えたのはお2人への敬意と感謝だったのですね。

さて、パリでも東京でも多くの健啖家を唸らせているお料理の紹介を続けましょう。

温前菜より「ジロール茸 温泉卵」(¥1,600)
パリ時代からの定番メニュー。使うキノコはジロール茸のみ。ジロール茸の美味しさを存分に味わえる一品です。フランスではジロール茸の採れる春と秋に登場するメニューで、温泉卵を使うのは鳥海シェフオリジナルの日本バージョン。パリでは、卵黄に火の入っていない状態のゆで卵を使い、周りには焦がしバター風味のパン粉をまとわせていたのだとか。それも美味しそうです……「焦がしバター風味のパン粉が卵と混ざりシャリシャリして美味しいですよ。オープン当初はそれをお出ししていたのですが、日本の方にはちょっと重いんですね。お腹がいっぱいになってしまう。それで、今のスタイルに」(鳥海シェフ)
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日本人の胃袋に合わせて定番メニューを少し変えてありますが“ジロール茸そのものの美味しさを味わう”というポイントは外さない温前菜。「温泉卵を崩して、混ぜて、ズルッ! という感じで召し上がってください」(鳥海シェフ)

「フランス ランド産鳩」(1羽)¥4,900
この美しい色は美味しさの証です。「絶妙なロゼに仕上げられた鳩は、舌触りもよく最高に美味しいんです。それに不可欠なのはきちんとした火入れとしっかりしたソース。中途半端に火を入れすぎると臭みが出てしまうんです」(鳥海シェフ)。鳩が苦手という方の嫌いになった原因はこの臭みかもしれませんね。美味しい鳩料理を自信を持って出せるのは腕のいい料理人の証でもあります。
ソースは、鳩のガラを赤ワインで炊き込んで取った鳩の出汁を煮込み、濃縮させていい苦味が出たところに少し甘みを加えた濃厚なソース。
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幸子さんに3品とともに味わいたいお勧めの自然派ワインを紹介していただきました。
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左から、「イタリア 仔牛タン」には、イタリア、エミリア・ロマーニャ州パルマの「ヴェイ・ビアンコ・アンティコ・メトッド・クラシコ」を。シャンパーニュ製法で造られていてシャンパーニュ同様に泡もしっかりとしています。「ぶどうはマルヴァージアの中でも香りの華やかなアロマティカという品種を使用しています。牛タンというとビールのイメージで、泡が面白いかなと。旨味もしっかりあるので牛タンに合います」(幸子さん)
中・「ジロール茸 温泉卵」には、フランス、アルザス地方のピノ・ノワール「アニマ」。「お出汁っぽい味わいがある、チャーミングで軽やかなピノ・ノワールです。冷涼な土地で作られているのでブルゴーニュとは違う柔らかさがあります。ジロール茸の繊細な旨味を邪魔せず、卵との相性もいいんです」(幸子さん)
右・「フランス ランド産鳩」には、フランス、ボージョレの生産者による「モンカイユー」、ぶどうはガメイです。ボージョレというとボージョレヌーヴォーのイメージですが、美味しい自然派ワインの造り手もたくさんいるのだそうです。「この生産者は古くからの、とても硬派な生産者で、ワインも生産者に似てパッと華やかというよりしみじみと旨味が出てくるタイプ。製造年は2006年でしっかり寝かせました。妖艶な香りもあり、ピジョンの味わいにも負けません」(幸子さん)

自然派ワインの最大の魅力は、さまざまな苦労を乗り越えて造り続ける生産者のエネルギーを感じられて個性がはっきりしていること。個性あふれる自然派ワインに出会えるのも楽しみです。

パリ【シェ レザンジュ】をはじめ8年間、フランス料理の腕を磨いた鳥海智史シェフと、パリに4年弱、人気店【ル・シャトーブリアン】にはソムリエとして3年間務めた鳥海幸子さん。通うごとにしみじみと上等な旨味が出てくる、そんなお店なのです。
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「シェフおまかせコース」は、¥6,000(アミューズ、前菜2品、お魚、お肉、デザート)、¥8,000(アミューズ、前菜4品、お魚、お肉、デザート)の2つ。

【yaoyu】
東京都千代田区神田錦町1-17-5 B1 /03-5577-6783/
18:00~22:30(L.O.)、不定休

撮影/よねくらりょう 取材・文/齊藤素子 編集/川原田朝雄

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筆者プロフィール:
「モキチ」ことライター齊藤素子。銀座・泰明小学校卒業。OLやギャラリー勤務を経て、1995年『VERY』創刊時にライター稼業を始める。食や旅のページを中心に雑誌やWEBで活躍中。その一方で、世界初の腰痛専門WEBマガジン『腰痛ラボ』では編集長を務める。

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