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【LIFE STYLE】パリ近郊 花とともに暮らす⑳ Dialogue

Update : 2021.01.10
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2021年初めての朝、庭に出ると目の前が真っ白だった。

A (1)

池の水面は固く凍りついていて、その横にある大きなクルミの木がまるで氷の世界の主のように凛、と立っていた。

自然が今日と言う日を祝福してくれているようで、目の前に現れた予期せぬ贈り物に気持ちが高揚する。

庭にくりだす犬も何故かいつもより興奮気味で、その勢いに連れられて小走りになる。負けまいとスピドをあげると犬はちらっと横目で見て、余裕でさっさと私を追い抜き走っていく。四足に勝てるわけがない、走るのを止め歩きだす。心臓がとくとく、と音を立て、さっきまで冷え切っていた手足はじんじんと暖かく、早くなった呼吸と共にまっ白な息が規則正しく口から出て、吸い込む冷たい空気が肺の奥まで届くのが分かる。

身が引き締まるような格別な寒さの中で、普段、特に意識をしていない身体の動きや部分を感じるのが妙に楽しい。

B C 1

凍りついた芝生の上を歩くと、足を運ぶたびにシャキシャキと音が立つ。何も書き込まれていないカレンダに最初のメモを書き込むような感じがする。はじまりはじまり、とおまじないの様につぶやいてみた。

それにしても何と潔い寒さなんだろう。この夜に庭の植物をあっという間に他の生物に変えてしまった。

C 2

気品高い、ふくよかな老婦人を思わせるグラミネ、昆虫のように今にも動きだしそうな雑草や落ち葉、凍った小さな水たまりさえも何かの生き物ように見える。

D 1

溢れるほどの花が咲きみだれる季節には、通り過ぎてしまうようなものに気が付くのも今日のこの寒さのおかげだな、と思う。

紫陽花やクロスグリの葉が剪定され地面に落ちていた。粉砂糖をふんだんにまぶしたように凍りついていて美しい。あと数時間たてばこの魔法はとけてしまうことは分かっているのだけれど、この時だけの美しさを束ねたい衝動にかられ、拾い集める。手のぬくもりで握っている部分がとけ出し冷たい。その美しさが消えてしまわないように、一本一本拾いながらその場で急いで束ねた。

E

新年の挨拶をするように庭をゆっくり時間をかけ一回りした。どんな季節でも植物との対話は、なかなか尽きず心がうきうきする。

F

冬の長い夜のお伴に、窓辺に咲くビオラを少し摘んでガラスの器に飾る。

植物との言葉のないdialogue

今年も又始まった。

 

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【PROFILE】
西田啓子:ファーマーズフローリストInstagram@keikonishidafleuriste
フランス・パリ近郊花農園シェライユ在住。パリの花のアトリエに勤務後、自然を身近に感じる生活を求め移住。以来、ロ-カルの季節に咲く花を使いウエデイングの装飾や、農園内で花を切る事から始める花のレッスンを開催。花・自然・人との出会いを大切にする。
https://keikonishida-fleuriste.jimdo.com/

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