しっかりと時間をかけて作る日もあるけれど、それでは毎日がまわらない……。
とはいえ、時短料理は溢れているけれど、
ただただ短い時間で料理ができればいいと思っているわけではない……。
「なぜ」このやり方なら、10分で作れるのか?
「どこ」さえおさえていれば、味の要が守れるのか?
理由を知っていれば、レシピを見続けなくてもサッと作れるようになる。
料理研究家の上田淳子さんに、(ほぼ)10分で作るための、省いていい部分・守るべき部分を教えていただきました。
もちろん、時間をかけて作るレシピは素晴らしいけれど、
日々の小さな幸せには、こういったレシピも必要だなと感じるのです。
たとえば、牛すね肉の塊を使って作るビーフシチュー。ホロホロと柔らかくなるまでには、3〜4時間ほどの煮込み時間を要します。お肉に下味をつけてから焼き付けて。煮込んで、アクをていねいに取り除いて……。野菜は別茹でして……。もっともっとこだわるなら、デミグラスソースから手作り……。
ビーフシチューって、ていねいに作ろうと思えば思うほど、工程を増やせる料理のひとつのような気がします。もちろん、じっくりと時間をかけて作ったビーフシチューは格別。
ですが、忙しい普段の日でも、おうちでビーフシチューを作って食べたい! そういうときもあるはず。
10分ビーフシチューでは、”柔らかい牛肉を味わいたい!”
ここをしっかり守って作っていきます。
ほぼ10分で作れるのには理由がある…!
おさえどころ・やめどころ
POINT 1
「塊肉は使わない。サイコロステーキを使う!」
塊肉をホロホロと柔らかくするために煮込む。だから時間がかかる。
であれば、そもそも柔らかい(サイコロ)ステーキ肉を使えばいい!
10分という短時間で作るとするなら、この「煮込む」という工程がなければいいのです。そのためには、はじめから柔らかい肉を使えばいい! そこで、今回は、牛サイコロステーキ(もしくは牛赤みステーキ)を使用。この場合、さっと焼き付けてさっと煮る程度で。煮すぎるとかえって肉がかたくなってしまいます。下味の塩こしょうは、しっかりと。
※もちろん、薄切り肉でもOK。
POINT 2
「玉ねぎときのこ類はしっかり炒める!」
マッシュルームなどのきのこ類をどれだけ炒めたか、これが旨みを決めるポイントです!
今回のビーフシチューの工程でもっとも重要なのが、きのこ類をしっかりと炒めることです。10分のうち、4~5分は、きのこ(と玉ねぎ)の炒め時間に使いたいです。強めの中火で、炒めているあいだは、じっと待つ。触らない。きのこから出てくる水分をしっかりと飛ばすことで旨みを出していきます。
POINT 3
「仕上げに、オイスターソースを。
市販のデミグラスソースに、”コク”をプラスするひと工夫!」
市販のデミグラスソースでも、十分美味しいですが……。今回は、煮込まない分オイスターソースを使用して、”コク”をプラスします。不思議とデミグラスソースがマイルドな味わいに。ですが、分量は厳守! 小さじ1弱で。それ以上入れると中華料理っぽくなってしまいます。
■ビーフシチュー風サイコロステーキの軽い煮込み
【材料】 2~3人分
【作り方】
1.タマネギは薄切りにする。シメジは石づきを切り落としほぐす。椎茸は石づきを切り、7㎜幅に切る。さいころステーキに塩ふたつまみ、こしょう少々をまんべんなくふっておく。
2.フライパンにサラダ油をひき、強めの中火にかける。フライパンが十分に熱したら、牛肉を入れ、表面のみ焼き付けて取り出す。
※肉の火入れ加減は、ミディアムレア厳守で(
3.フライパンにバターとタマネギを入れて強めの中火でさっと炒める。この中にキノコを入れ、キノコの水分が出て、それが飛び、さらに軽く焼き色がつき、香りが立つまで4,5分炒める。
4.この中に赤ワインとローリエを入れ、半量になるまで強火で煮詰める。
5.デミグラスソースを入れてひと煮立ちさせ、オイスターソース、塩、こしょうで味を調え肉を戻しさっと温める程度に火を入れる。あくまでもステーキ肉をさっと煮るイメージで。火の通りは、ミディアムウエルダン位を目指します。シチューだからと言って、決して煮すぎないように!
【バックナンバー】
【PROFILE】
上田淳子:料理研究家。スイスやフランスのレストランで修業を積み、現在の道へ。食育の活動も行う。著書多数。新刊は『ごちそうしたい、ほめられたい 実は簡単! ハレの日ごはん』(NHK出版)、『上田淳子のチキンスープ − 鶏肉=具材、スープ。簡単、本格的。』(グラフィック社)
Instagram:@ju.cook
撮影/大森忠明 文・構成/松本朋子