家にいる時の”心地よさ”というのは、どうやって決まるものでしょうか。
広いリビングや機能性、リッチな触り心地の家具が大切だったり、
高層マンションからの眺めという方もいらっしゃるかもしれません。
HERSがインテリア特集で向き合ってきたことのひとつに、
「自分らしさ」というものがあります。
なにも今さら、自分探しをしていただきたい、という青臭い話ではありません。笑
暮らしていて、自分が好きなもの、自分が気持ちいいこと、
自分が感じる”心地よさ”に素直でいられるかどうか、ということだと思います。
様々な企画でお世話になっている料理研究家、植松良枝さん。
生活にグリーンが欠かせないということで、
テラスには、トネリコ、月桂樹、クスノハカエデ、ジューンベリー、西洋ニンジンボクなど、
多種を育てていらっしゃいます。
こちらに入居されてから、大きく育つ樹木を育て始めたそうです。
テラスで過ごす時間もさることながら、リビングからグリーンを眺めるのも至福の時間だそう。
室内に目を移すと、お仕事を反映したご自身らしさが発揮されています。
オーダーで作られた食器棚は中央をオープンデザインにして使い勝手もよく、
眺めたい器や季節の花などを飾るためのスペースです。
扉を開けると、トーンを揃えられた食器の数々。
こうやって見ても、美しいですね。
キッチンの吊り戸棚の一方は扉をはずして、
見ていて楽しいおひつや銅鍋を収納してあります。
湿気がこもらないという利点もあるそうですよ。
植松さんのお宅は、壁使いが素敵です。
スペイン・バスクのバルで使われているワインオープナーは、
キャップシールをつけたまま開栓できるので便利です。
しかも、カッコいい!
タイル貼りにした廊下の壁にフックを差し入れ、
数々の刷毛やホウキを見せながら収納。
オシャレに見えるだけでなく、気になったらすぐ掃除もできるんです。笑
細かいことですが、食器棚の引き出しに注目すると…
取っ手がひとつひとつ変わっています。
スペインの金物屋さんで買ってきた、いろいろな取っ手を採用。
こういう遊び心にこそ、オーナーさんのセンスが表れるところですよね。
人が集まることが多い植松さんのお宅。
もちろん高級家具も結構ですが、お呼ばれして目を引かれてしまうのは、
実は、その家主のセンスが滲み出たところです。
どんな質感や色合いでまとまっているか、どんな素材の壁や床か……
そこに生活していないからこそ、気になることもありますよね。
家は自分が暮らすための場所。
だから、自分が心地よければいいのです。
でも、その”自分らしさ”が、周りの人も心地よくしてくれるとしたら、
そんなに幸せなこともありません。
”いい家”ってどんな家なのか、その答えはまだまだ見つかりそうもありません。
~編集Kより、これまで関わっていただいた皆様への感謝を込めて~
撮影/金子美由紀(ナカサアンドパートナーズ) 取材/加藤登紀子
HERS2019年1月号より