今週のパトロールは秋物の入荷真っ盛りで盛り上がる、伊勢丹新宿本店。本館2FのISETAN ART SPACEで開催中の『トム・サックス 店舗体験』へ行ってきました。
トム・サックスは1966年生まれの54歳、ニューヨークをベースに活動している現代アーティストです。昨年春に東京オペラシティ アートギャラリーで開催された個展『トム・サックス ティーセレモニー』も大盛況。 ナイキとコラボしたスニーカーは瞬殺で高額転売されるなど、日本でもファッション好きなメンズを中心に注目度の高いアーティストです。

Photo:Mario Sorrenti

作品のテーマは“handmade piece from readymade goods（既製品からの手作り）”。身近にある簡素な素材を使用してDIY風のアプローチで作品を生み出す作風で知られています。手書きのエルメスオレンジの包装紙でマクドナルドのハンバーガーセットを再現したり、プラダのシューズボックスを使用して便器を作った作品など、ファッションをモチーフにした作品は目にしたことがある人も多いはず。

今回の伊勢丹での展示は、トム・サックスの最初の仕事がアメリカのバーニーズニューヨークのウィンドウディスプレイ制作だったというキャリアとリンク。自ら会場をデザインし、「小売り体験」を総合的にデザインする展覧会になっています。展示されているのは過去に手がけたアート作品や新作家具など。ほぼ全てのプロダクトにプライスがつき、購入できるようになっていました。

具体的にはアーティスト自ら「僕らバージョンのイームズチェア〈LCW〉」と表現しているラウンジチェアやイサム・ノグチとコラボしたランプなど家具類、手頃なところではトランプカード、ファニーバック、Tシャツなど。物欲を刺激するラインナップ。

《椅子 Shop Cher》¥380,000 ©︎Tom Sachs　伊勢丹先行発売

《トランプカード Boombox Card Deck》¥3,400©︎Tom Sachs 　伊勢丹先行発売

《ファニーパック Fanny Pack》¥50,000©︎Tom Sachs　全3色展開、オリーブカラーは伊勢丹先行発売

《Tシャツ NASA T-Shirt》¥6,900 ©︎Tom Sachs 　伊勢丹先行発売

 一点もののアート作品のお値段は数千万円〜。全て売約済みでした。

 　ちなみにこの展覧会は、伊勢丹スタッフのひとりがトム・サックスのコレクターでその友人の紹介によってトム本人に直接コンタクトをしたことがきっかけとなり開催に至ったのだとか。その熱量が伝わってくる展示でした。誰もがECでのお買い物に傾きがちな現在ですが、やっぱり実際に店舗を訪れて空間を共有し、ストーリー性のある商品を手に取りながらのお買い物って忘れちゃいけない体験だなってあらためて痛感。

つまりは「店舗体験」というタイトルもアーティストからのメッセージ。伊勢丹ショッピングの折には忘れずチェックしてください。

【DATA】

Tom Sachs:Retail Experience　トム・サックス：店舗体験
〜11月30日（月）
入場無料
伊勢丹新宿店本館2階＝イセタン　ザ・スペース
 https://www.mistore.jp/shopping/feature/women_f2/thespace3_tomsachs1_w.html

text:安西繁美

女性誌やカタログで主にファッション、食関係、アートの企画を担当する編集・ライター。流行には程よく流されるタイプで、食いしん坊、ワインと旅行好き。家族や友人に美大出身が多いのに私は画力ゼロ。描けないけど書けるようになれたらいいなと。トム・サックス展の展示で一番欲しくなったのは、伊勢丹ロゴ入りの案内板。残念ながら非売品でした。